第五回
  第一の習慣「主体性を発揮する」
  その2.「影響の輪と関心の輪」編
企 画 社団法人千葉県臨床検査技師会
協 力
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDソリューションBU コヴィーグループ

 皆さんの周囲には、いつも不平不満、愚痴ばかりこぼしている人、見当たりませんか?
出来ないことは全て自分以外のせいにして言い訳ばかりで、主体性が全く無い人・・・。

 『7つの習慣』では、どのような状況であっても、自らが出来ることに集中し結果を出している人を、主体性を発揮している人と定義付けしています。
 では、主体性というものを自覚し、育むにはどうしたらいいのでしょうか?図の【影響の輪と関心の輪】をもとに詳しく説明します(図1)。
 私達は様々なことに関心を持っています。それは日本経済の行方だったり、あるいは自分が勤める病院(会社)のこと、職場内の人間関係、そして子供の教育問題などなど・・・、皆さんも数多くのことに関心を持っていることでしょう。その場合は【関心の輪】に集中していると言います。そして関心を持つだけでなく、実際に行動し影響を及ぼしている場合は 【影響の輪】に集中していると言います。例えば日本経済に関心は持っているけれど、自分の力で影響を及ぼすことは出来ないからなぁ、という人は【関心の輪】に止まっている人。でも小泉首相や日銀総裁は【影響の輪】に入って日本経済を立て直す活動が出来る人です。もっとも活動してもらわないと困ってしまう人です。

 つまり私たちの活動とは、影響の輪に入って結果を出せるものと、関心の輪で出せないものがあるのです。ところが影響の輪で活動できるのに、関心の輪に止まり不平不満ばかり言っていたら、何の問題解決も出来ません。

 ここに二人の人がいるとします。Aさんはいつも不平不満ばかり言い、自らは何もせずに関心の輪に止まっている人。かたやBさんは、常に自分には何ができるのだろうかと考え、その中で最大限に結果を出そうと影響の輪に集中している人。
 さて、どちらの人と一緒に働きたいですか?当然、Bさんと一緒に働きたいですよね。
関心の輪に止まっているAさんと、仮に同じプロジェクトに参加することになったとします。でもそのプロジェクトは上手くいきませんでした。その時Aさんは「自分は頑張ったのさ、でも○○がね・・・」と周囲に言い訳したり、ひょっとしたらあなたのせいにするかもしれません。こんな人と一緒にお仕事するのは、ごめん・・・、ですよね。関心の輪に集中し、他責ばかりしている人の影響の輪はだんだんと小さくなります(図2)。そして次第に人は離れていきます。

 一方でいつも主体的に活動し、結果を生み出している人の影響の輪はだんだんと拡がり、たくさんの人が集まってきます(図3)。

そして刺激を受けた仲間たち一人一人の主体性も育まれます。そして組織はとても活性化することでしょう。

 私達は、とかく出来ない原因を自分以外に押し付けがちです。そのほうが楽ちんなんです。責任もついて回らないし・・・。でも
激しく変化する環境の奴隷になる必要はなく、自分自身が環境を変えていくことが出来るという自覚を持つことが大切です。関心の輪に追いやるのも追いやらないのも、要は自分の“心の力”次第ではないでしょうか?

エピソード【あるドクターとの出会い】
 私は猫を3匹飼っています。そのうちの1匹でマッ黒な猫、“ネネ”の左顔の異変に気付いたのは今年2月のことでした。直ぐにイエローページを開き、窓広告を掲載している近所の動物病院へネネを連れて行きました。するとドクターは患部を触りもせずに“これは風邪ですね”とひと言。そして注射と抗生物質が処方されました。左顔面が腫れているのに風邪?でも、先生が言うなら・・・。全く同じ治療が3回続きました。そして通院4回目、腫れがひどくなるネネを診て(実態は見て)、“冬のこの時期、これは仕方ないですね、部屋の環境も悪いのでは?もう手の施しようが無い、癌かもしれないし”、とドクター。13年も一緒のネネが癌!?耳を疑いました。猫のことですが、ガン患者のDying Process(キューブラー・ロス)が頭に浮かびました。否認そして怒りです。でもその怒りはネネを触りもせずに診断するドクターに対してでした。“手当て”という言葉は医療現場から生まれたものです。「痛いところは?、悪いところは?」と、手を当てて治療を施すのがドクターの基本姿勢ではないでしょうか?

 癌を宣告された翌日、ネネを抱きかかえて新たな動物病院のドアを叩きました。半ば諦めている飼い主の私と辛そうなネネに対して、優しい手を差し伸べてくれました。毎回毎回じっくりと時間をかけてのインフォームドコンセント。私自身も病院にかかっていますが、このようなインフォームドコンセントを受けた経験は皆無です。時には40分もかけてくれるのです。そして投薬内容もネネの症状に合わせて質、量、形状なども変えてくれました。とにかくネネと私に真剣に向き合ってくれたのです。更に腫瘍部分の組織採取をし、米国の専門機関に送り処置方法を研究してくれました。そして想定されるのは副鼻腔の癌、リンパ節にも転移する悪性のものでした。ネネは次第に何も食べなくなりました。苦しそうに呼吸している姿を見ていると、楽にしてあげたい、そう思うようになりました。そんな時、ドクターは安楽死について触れてくれました。私から口に出せないことを敢えて先に切り出してくれたのです。とても、とても迷いました。でも、ネネを楽にしてあげられるのは森さんしかいない、そう、ドクターは仰いました。そして私は決断しその週末、ネネはドクターにお願いしました。この原稿を書いている2週間前のことです。

 ドクターは常に影響の輪に入って考え続けてくれました。ネネを治すには何ができるか、飼い主である私にも何ができるか、心のケアまでしてくれたのです。

 そんなドクターですから、いっつもたくさんのワンちゃんやネコちゃんがこの動物病院を訪れています。影響の輪が凄く拡がっているのが解ります。

 最初の関心の輪の治療しかできないドクターには、今残された2匹が病気になっても、絶対に見てもらいたくはありません。

おしまいに、、、
ヒトを診るドクターでも【関心の輪】の治療しかしない、そんなドクターがもしいたとしたら、それはとても怖いことです。
  -------この内容は、フランクリン・コヴィー・ジャパン「7つの習慣」トレーニングプログラムに基づいて表現しています-------


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