設問 7

社団法人千葉県臨床衛生検査技師会 一般検査研究班

25歳、男性。 3週間のインド旅行中水様便性下痢、腹痛。帰国後内科受診。便潜血陰性 便細菌培養で、起炎菌は検出されなかったが、抗酸染色を行なったところ設問7-1矢印で示した赤い物質を認めた。臨床側からの便虫卵検査依頼はなかったが、ホルマリン・エーテル法(MGL法)を行なった。虫卵は検出されなかったので、さらに蔗糖遠心浮遊法を行ったところ、設問7-2の酵母真菌様物質を認めた。矢印で示した成分を判定してください。

設問 7-1 抗酸染色400倍

設問 7-2 蔗糖遠心浮遊法400倍

正解 クリプトスポリジウム

解説 クリプトスポリジウムは、MGL法では検出できないため、渡航先や症状を念頭に起き検査法を選択する必要がある。Cryptospridiumのオーシストの大きさは5〜6μmで、検査法としては、蔗糖遠心浮遊法(比重1.2)や簡易迅速蔗糖遠心浮遊法(比重1.3)がある。これらの検査法では、オーシストは比重が軽いため(1.06)、鏡検時フォーカスを最上層に合わせることが重要である。オーシストは、薄いピンク色に輝いて見え、酵母様真菌などとの鑑別も容易である(設問7-2)。抗酸染色では、オーシストは赤染する。また、オーシスト壁に対するモノクローナル抗体にfiuorescent isothiocyanateラベルした蛍光染色法による検出法も有効である(解説7-1)。
1999年4月よりクリプトスポリジウムは、第4類感染症に指定され免疫不全患者の日和見感染症の原因としても重要である。また、本症は、塩素処理による効果が少ないため、発症患者による水系集団感染を起こす可能性があるので適切な検査法を用い迅速に検出する必要がある。

解説 7-1 蛍光染色法
千葉県衛生研究所 福嶋 得忍先生提供
伊瀬 恵子(千葉大学医学部附属病院)

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